以前、書籍名を耳にして気になっていた一冊。
今回紹介するのは、北条裕子さんの『美しい顔』です。
本作は東日本大震災を取り扱っています。
マスメディアに対する憤り。
大勢の死。
絶望からいかにして立ち上がるか。
そういったものがギュッと込められています。
人によっては、読むのがつらいと思います。
また、著者の方は被災者ではないそうです。
ですから、反発を覚える方がいらっしゃるのではないか、と思っています。
本作は第六十一回群像新人文学賞を受賞しています。
その際、少々揉めました。
大まかな経緯はWikipediaに記載があります。
興味がありましたら、ご覧ください。
北条裕子さんについてのWikipedia
これらの経緯を理解した上で読みたいと思った方は、読んでみてください。
愛を貫いた女性の物語『ピンク&シュガー』
私は本作のタイトルを、今回実際に読む前から聞き知っていました。
文学賞受賞作で何かしら問題があった、といった感じで、ニュースを耳にしたのです。
被災者でない人がここまで心に迫るような作品を書き上げた。
それはすごいことだと思います。
私はページを開き、読み進めるたび、涙が溢れてしまいました。
私は被災者ではないので、あの日あの時、どれだけの絶望と後悔が渦巻いていたのか、想像することしかできません。
映像を見ても、写真を見ても、話を聞いても、どんなに理解しようと頑張っても、すべてを理解することはできないと考えています。
だから、東日本大震災について描くのは、私にはできないです。
でも、これが遥か昔……例えば縄文時代や戦国時代みたいな、昔に起きた出来事なら、想像して書ける、かもしれません。
私という個人の頭の中で空想を広げても問題ない、と自分で自分を許せる、からなのだと思います。
そういった点で、本作を執筆された北条裕子さんはすごい方だなぁと。
作品の良し悪しは、読者の方、一人ひとりが判断なさってください。
本当は作品が表に出てくる背景など知らず、物語に触れるのが良いのだと思います。
ただ、本作は語らず触れる、というのもなかなか難しいかもしれない、と悩んだりします。
気になる方は是非。

なぜシロクマ書庫は解散したのか?『シロクマの背に乗る』
コメント