【書評】「花」という美を追求する

書評・古典を読む

幼い頃に物書きを志して、いろいろな本を手に取ってきました。
小説、エッセイ、ビジネス書、実用書、インタビュー、ドキュメンタリー。
どの本にも気づきや学びがあり、読書は楽しいものだと心躍ります。

でも、手を出そうとして出せていないものがあります。
それは古典です。

古典文学に興味がないわけではありません。むしろ学校の授業などで名前を聞いたことがあったり、内容を把握していたりするので、興味はあります。ですが、読む勇気がなかなか湧きません。

理由は「読むのが大変そう」だから。

普段手に取る本は、口語に近い文章がほとんどです。対して古典は書き言葉に近い作品が多い。
普段読むスピードで読書を進められないので、どうしても手に取るのを後回しにしてしまうのです。

でも、いつまでも手に取らずにいるのはもったいない。

最近ようやく腹を括れるようになったので(笑)今回、勇気を出して一冊読んでみました。
今回手に取ったのは、世阿弥が残した能楽理論書『風姿花伝』です。

といっても原文ママだと読むのにものすごく時間がかかってしまうのは明白でしたので、水野聡さんが翻訳されたものを手にしました。

 * * *

世阿弥は室町時代の能楽の大成者です。世阿弥は父・観阿弥の元で能を学び、芸能の美を深く追求しました。
能楽理論書である『風姿花伝』は元々、一子相伝の秘伝書でしたが、明治になってから一般の人々でも読めるようになりました。

『風姿花伝』全体は序の後に第一〜第七、七つに章立てされています。
一度に全章を執筆したのではなく、時代によって追記する形で執筆を進め、現在の形になっています。

内容は、能を極めるためにはどのような点に注意したらよいのか。
それを丁寧に且つ厳しく説明しています。

能楽理論書ですので、主体は能。ですが、芸能全般で説明しても理解できる内容です。

芸に宿る美を世阿弥は「花」と表現しています。
演技にいかに「花」を持たせるのか。
稽古の段階、物真似の仕方、芸の築き方、心構え。
「花」という美がどのようにして表現されるのか、美しい文章で綴られています。

 * * *

「能楽理論書ならば一般の私たちには縁のない本なのではないか?」
そのように考える方がいらっしゃるかと思います。ですが、そんなことはありません。

本書「第一 年来稽古條々」では、年齢に合わせて物事を習う大事さが書かれています。
七歳、十二歳、十七歳、二十四歳、三十四歳、四十四歳、五十歳。
それぞれが目指す地点の違いが丁寧に説明されています。

「第五 奥儀に讃歎して云わく」では、慢心を戒め、あらゆる芸を極めることの大事さを説明しています。
・一部の芸だけを見て他の芸を知らず、よその芸を毛嫌いする。これは腹いせではないのか。
・面白いと感じる部分は万国共通である。
・上手な者は目利きでない人にも面白いと思われる芸をする。
・自分の基本を疎かにしてはならない。
極めるとはどういうことを指すのか。高い志を知ることができます。

 * * *

本書は能楽理論書です。なので、内容は演劇寄りではあります。
ですがここに書かれている内容は「美とは何なのか」なのです。
私たちが作品を見て「面白い」「楽しい」と感じる心。
それを得るためにはどのような工夫が必要なのか。理論的に説明しています。

本書を読むのは楽ではありません。
翻訳書なので原文よりは多少楽ですが、口語文ではないからです。
ですが、何かを極めようと考えている方には一度、読んでいただきたいです。
多くの学びがあると思います。

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