【書評】伝わる言葉の難しさ

書評・勉強になる本紹介

小説を好き勝手に書いている私ですが、いつも悩むことがあります。
それは「自分が書いた文章意図はきちんと相手に伝わっているのだろうか?」ということです。

文章の悩みを調べてみると、同じような不安を抱えている人が世の中には大勢います。
「これは正しい文章表現なのだろうか?」
「伝えたい内容を読んだ相手は正確に把握しているのだろうか?」
「書き上げた文章に間違いはないのだろうか?」

今回紹介する飯間浩明さんの著書『つまずきやすい日本語』は、気をつけるべき点をわかりやすく教えてくれる本です。

飯間浩明さんは『三省堂国語辞典』編集委員のお仕事をされています。なので、本書で紹介されている視点は、辞書作りの人から見た日本語の分析の側面があります。

辞書作りといえば、三浦しをんさんの小説『舟を編む』を思い出します。私の好きな小説の一冊です。

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今回紹介する『つまずきやすい日本語』では、私たちがコミュニケーションを取るときにつまずきやすいポイントを紹介しています。

それは、ニュアンスによることばの違い、世代間で意味が変化したことば、方言などです。
気をつけるべき点を疎かにした結果、本人の意図とは別の捉え方をされて関係が拗れてしまう。
そんな実例が挙げられているので、とても理解しやすいです。

「つまずき」を減らすために大事なことは、人と話す機会を増やすこと、さまざまな種類の本を広く読むことだとおっしゃっています。
そうすることで、相手が知っている言葉のニュアンスを理解できるようになり、誤解を避ける伝え方を選択することができるようになります。

著者の飯間浩明さんは、一番大事なことは「伝わるかどうか」だとおっしゃっています。
ことばというものは時代と共に変化していくのが当然であり、正解はないからです。

気をつけるべきことは、相手に伝わることばを選んでいるかどうか。
そこを抑える大切さがわかりました。

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本書は辞書編纂の方が執筆されているので、どちらかといえば会話における「つまづき」を重視して編纂されています。
ですが「第四章「つまずき」を避ける方法」で、文章でのつまずきを避ける注意点を教えてくれます。

それは「多義的なことばを排除する」ことです。

文章を扱う人間にとって一番避けなければならないことは、違う意味で伝わることです。
会話でしたら相手の反応を見つつフォローできますが、文章ではそれができません。
一度勘違いされてしまうと、修正することがとても困難です。

「多義的なことばを排除する」
つまり、多くの意味に解釈される可能性があることばや文章は初めから使用しないことです。

その例題に『頭の赤い魚を食べた猫』という文章が取り上げられています。
この文章にはさまざまな読み取り方がありますが、わかりますでしょうか?
本書では詳しく紹介してあるので、気になった方は確認してみてください。

文章表現が悪いと、伝えたい内容とはまるで違った受け取り方をされる危険が高まります。
それを避けるためにも、引っかかりを覚える表現は修正もしくは削除するのが良いと思います。

一番良いのは、第三者に一度読んでもらうことです。
書いた文章が違う意図で読まれていないかどうかをチェックするのに、第三者の存在はとてもありがたいです。

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人はどのような文章に対して「つまずき」を感じるのか。
それを勉強し、経験として活かしていく努力が大事なのだと考えます。

本書が気になった方は是非、一度ご覧になられてください。
コンパクトにまとめられた本なので、読むのに苦労は少ないです。

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